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東京地方裁判所 平成8年(ワ)1974号 判決

原告

曽我政子

被告

土谷建設株式会社

東京都

主文

一  被告土谷建設株式会社は、原告に対し、金二四五万七三七〇円及びこれに対する平成五年七月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告の被告土谷建設株式会社に対するその余の請求及び被告東京都に対する請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、原告に生じた費用の四分の一と被告土谷建設株式会社に生じた費用の二分の一を被告土谷建設株式会社の負担とし、その余の費用はすべて原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告の請求

被告らは、原告に対し、各自金七九四万一一六九円及びこれに対する平成五年七月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、自転車に乗って走行中、道路上に置かれていた工事用鉄板等によって生じた段差のために転倒して負傷した原告が、右鉄板を占有する工事会社である被告土谷建設株式会社(以下「被告土谷建設」という。)に対して、土地工作物責任(民法七一七条一項)又は不法行為(同法七〇九条)に基づき、道路の管理者である被告東京都(以下「被告都」という。)に対して、国家賠償法(以下「国賠法」という。)二条一項に基づき、損害賠償を求めた事案である。

二  当事者の主張

1  被告らの責任原因

(一) 原告の主張

(1) 本件事故の態様

原告は、平成五年七月一八日午後七時三〇分ころ、東京都板橋区大山西町二一番地所在の原告が当時居住していた都営住宅内道路(以下「本件事故現場」という。)を自転車に乗って走行中、右道路の中央部分には鉄板が敷設されており、また道路中央部分には別の自転車が走行していたため、道路右側の鉄板の敷かれていない幅五〇ないし六〇センチメートルの部分を時速約五キロメートルで走行していたが、都営住宅五号棟の自転車置場に向かうため左折しようとしたところ、鉄板及びその脇の土のえぐれにより約五センチメートルの段差が生じていたため、身体の左側を下にして転倒し、左腕、肩、腰、足などを強打した(以下「本件事故」という。)。

なお、本件事故現場には、照明設備がないだけでなく、段差についての警告設備も全く設置されていなかった。

(2) 被告土谷建設の責任

被告土谷建設は、本件事故現場に土地工作物である右鉄板を敷設したものであり、その設置又は保存に瑕疵があり、また、右鉄板を敷設するに際し工事上必要な注意を怠ったものであるから、民法七一七条及び七〇九条に基づき、損害賠償責任を負う。

(3) 被告都の責任

被告都は、本件事故現場の道路を管理するものであり、公の営造物の設置又は管理に瑕疵があるというべきであるから、国賠法二条一項に基づき損害賠償責任を負う。

(二) 被告土谷建設の認否

(1) 原告の主張(1)について

本件事故現場において、道路はアスファルト舗装されており土がえぐれることはないから、鉄板と道路の段差は約二センチメートルにすぎず、また、現場付近には仮設照明及び保安棒点滅型が設置されていた。

(2) 原告の主張(2)について

被告土谷建設が原告に対し工作物責任ないし不法行為責任を負うことは認める。

(三) 被告都の認否

平成七年七月一八日当時、原告が板橋区大山西町二一番地所在の都営住宅に居住していたこと、被告土谷建設が同都営住宅敷地内で住宅改造工事を行っていたこと、及び同被告がそのころ道路上に工事に必要な範囲内で鉄板を敷設していたことは認めるが、その余は不知ないし否認する。

2  損害額

(一) 原告の主張

(1) 治療費 一〇万三七七〇円

原告は、本件事故により、第一〇胸椎、第三、第四腰椎圧迫骨折、頸部挫傷、左肩・膝関節捻挫、右肘関節捻挫等の傷害を負い、左のとおりの医療機関で治療を受け、治療費として合計一〇万三七七〇円を支払った。

〈1〉 平成五年七月二一日から同月二二日まで

初海整形外科 通院(通院日数 二日)

〈2〉 同年七月二二日から同年一〇月三日まで

田﨑病院 入院(入院日数 七四日)

〈3〉 同年一〇月四日から同年一〇月一五日まで

田﨑病院 通院(実通院日数 二日)

〈4〉 同年一〇月二五日から平成六年八月一五日まで

小豆沢病院 通院(実通院日数 二九日)

〈5〉 同年六月二〇日から平成七年一月二三日まで

帝京大学病院 通院(実通院日数 六八日)

(2) 治療器具・薬代 二万九三八九円

原告は、石倉義肢製作所に対し二万一三七〇円を支払い、また、薬代として八〇一九円を支払った。

(3) 入院雑費 九万六二〇〇円

原告は、前記(1)のとおり、田﨑病院に七四日間入院した。

一三〇〇円×七四日=九万六二〇〇円

(4) 通院交通費 二万五八四〇円

(5) 休業損害 四五三万六一五二円

原告は、本件事故以前は、家事労働を行いながら、家政婦としても稼働し、一日平均約二九一九円の収入を得ていたが、本件事故後五五四日間の休業を余儀なくされた。

家事労働者の基礎収入を平成六年度賃金センサス女子労働者学歴計六五歳以上の二九八万八七〇〇円(一日平均約八一八八円)として計算すると、原告の休業損害は、四五三万六一五二円である。

八八一八円×五五四日=四五三万六一五二円

(6) 家政婦代 一五万五八〇〇円

原告は、家事労働ができなかった期間、板橋区社会福祉協議会に家政婦の派遣を依頼し、そのために右金額を支出した。

(7) 入通院慰謝料 二五〇万〇〇〇〇円

(8) 後遺障害による逸失利益 八六万三〇四四円

原告は、平成七年一月二三日に症状が固定したものであるが(当時六八歳)、本件事故により、左肩関節について屈曲が一八〇度のうち一六〇度、伸展が四五度のうち三〇度、外転が一八〇度のうち一六〇度、外旋が六〇度のうち四五度で、健側に比較して四分の三以下に可動域が制限されており、また、頸部の痛みもあるから、少なくとも後遺障害別等級表の一二級に相当し、労働能力喪失割合は一四パーセントである。そして、原告の事故前の収入は、前記のとおり一日平均二九一九円、年収一〇六万五四三五円であったから、就労可能年数を七年としてライプニッツ係数を用い中間利息を控除して計算すると、原告の後遺障害による逸失利益は、八六万三〇四四円となる。

一〇六万五四三五円×〇・一四×五・七八六=八六万三〇四四円

(9) 後遺障害慰謝料 二七〇万〇〇〇〇円

(10) 小計 一〇一六万〇一九五円

右(1)ないし(9)を合計すると、原告の損害額は一一〇一万〇一九五円であるが、原告は、被告土谷建設から八五万円の支払いを受けたため、未払いの損害額は一〇一六万〇一九五円である。

(11) 弁護士費用 七〇万〇〇〇〇円

(12) 損害額総合計 一〇八六万〇一九五円

請求額七九四万一一六九円は、右損害額合計の一部について請求したものである。

(二) 被告土谷建設の認否、反論

(1) 本件事故と損害の相当因果関係

原告が右のとおり各病院に入通院した事実は認める。このうち田﨑病院の辻泰喜医師(以下「辻医師」という。)は、平成五年一〇月三日に同病院からの退院を許可した後、レントゲン検査に異常がないこと、神経ブロック等の治療により順調に回復していたこと、高齢による骨の変形も考えられ痛みを完全になくすことは困難であることから、同年一二月一六日をもって治癒と診断した。原告は、神経ブロック治療が嫌という自らの判断で同年一〇月に、小豆沢病院へ転院したので、治療の必要はなかった。また、小豆沢病院及び帝京大学病院で治療を受けたのは加齢性の肩関節周囲炎(いわゆる「四十肩」又は「五十肩」)についてであって、本件事故に基づく症状についてではない。以上からすると、原告の小豆沢病院及び帝京大学病院への通院は本件事故と相当因果関係がない。

(2) 過失相殺

本件事故現場においては、鉄板と道路の段差は約二センチメートルにすぎず、また、仮設照明及び保安棒点滅型が設置されていた。

原告は、本件事故当時、本件事故現場に鉄板が敷いてあり段差があることを知っていながら、不注意に湿潤した鉄板に乗り上げたために滑って転倒したか、又は、直角に曲がろうとしたという無理なハンドル操作により転倒したものであるから、少なくとも五割の過失相殺をすべきである。

(三) 被告都の認否

争う。

第三当裁判所の判断

一  判断の基礎となる事実

甲一ないし二六、乙一ないし七(いずれも枝番の表示は省略)、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

1  被告土谷建設は、本件事故現場付近の都営住宅の改装工事を行ったが、その際に重機の走行により都営住宅内の道路を傷つけないために、厚さ約一九ミリメートルの鉄板を道路上に多数敷設した。

都営住宅五号棟と一号棟の間の道路(本件事故現場)は、下水管を埋設するためにアスファルト舗装が剥がされていた幅約一メートルの溝部分を除き、全面にわたってアスファルトで舗装されていた。そして、前記溝部分の大半は鉄板で覆われていたが、鉄板の外側に部分的に土及び砂利の露出した部分が存在し、右部分では鉄板と道路との間には約二〇ないし三〇ミリメートルの段差があった(被告土谷建設は、鉄板の敷設された部分以外はアスファルト舗装されていたから土がえぐれていることはない旨主張するが、乙第一号証によれば、鉄板の外側にも土又は砂利が露出した部分があることは明らかである。もっとも、原告が主張するように、土が大きくえぐれて約五センチメートルもの段差が存在したと認めるに足りる的確な証拠もない。)。

2  本件事故当時、本件事故現場付近には特段の照明設備及び警告設備は存在しなかった。付近には数棟の都営住宅建物が存在したが、いずれも本件現場に面した側には養生幕が張られていたため、住居から漏れる光はほとんどなかった。もっとも、本件事故現場は、近隣の街灯の光などにより、完全な暗闇ではなく多少は明るい状態であった。また、本件事故当時の天候は曇りで、午前中に降った雨のため、道路は湿潤した状態であった。

3  原告は、平成五年七月一八日午後七時三〇分ころ、五号棟の自宅へ帰宅するために、都営住宅内の五号棟と一号棟の間に本件事故現場の道路を自転車で走行していたが、後方から走行してきた自転車に道を譲ったため、道路右側の鉄板の敷かれていない幅五〇ないし六〇センチメートルの部分を時速約五キロメートルで進行した。

そして、原告は、五号棟の自転車置き場に向かおうとして、左折するため、ハンドルを大きく左に切り、鉄板の上に乗り上げようとしたところ、道路と鉄板との間の約二〇ないし三〇ミリメートルの段差にハンドルを取られ、自転車から投げ出されて身体の左側を下にした姿勢で転倒し、左腕、左肩、左足、頸部などを強打した。

本件事故の際、原告は、自転車の前照灯を点灯しており、荷物は前かごに小さいタッパー一個を入れていただけであった。

4  原告の治療の状況は以下のとおりである。

(一) 原告は、本件事故後の平成五年七月二〇日、初海整形外科を受診したところ、第一〇胸椎圧迫骨折、左肩腱板損傷、右肘・膝関節捻挫との診断を受け、同月二二日、初海整形外科の医師の勧めで田﨑病院に入院した。

田﨑病院の辻医師は、原告の傷病名を第一〇胸椎、第三、第四腰椎圧迫骨折、頸部挫傷、左肩、膝、右肘関節の捻挫及び打撲、外傷性左肩関節周囲炎と診断し、鎮痛剤の投与、湿布、神経ブロック等の保存的療法を中心に治療を行った。また、原告は、同月二三日及び同年八月一一日、田﨑病院の紹介でMRI検査のため中村クリニックを受診し、同年九月二日には治療で皮膚が荒れたため、大山皮膚科医院を受診した。

(二) 田﨑病院での治療の結果、原告の頸部から左肩にかけての痛み、腰痛、左上肢の運動制限は消失はしなかったものの相当程度軽減したため、辻医師は同年一〇月三日に退院を許可し、その後は神経ブロック治療を行ったが、症状は再び悪化した。

原告は、田﨑病院で行っている神経ブロックは、一時的に痛みを抑えるだけで効果がないものと考え、辻医師に知らせることなく、同年一〇月二五日、小豆沢病院を受診した。小豆沢病院の芹沢憲一医師は、原告を腰背痛症、左肩甲関節周囲炎と診断し、投薬、運動療法等を行った。

(三) その後、原告は、平成六年六月二〇日から、帝京大学病院を受診した。帝京大学病院の池田信医師は、原告を外傷性頸部症候群、左肩関節周囲炎と診断し、理学運動療法を行った。

(四) 原告は、平成七年一月二三日、帝京大学病院で症状固定の診断を受けたが、この時には次のとおりの左肩関節の可動域制限が残存した。

(1) 屈曲 他動一六〇度 自動一五〇度

(健側はいずれも一八〇度)

(2) 伸展 他動 三〇度 自動 一〇度

(健側はいずれも 四五度)

(3) 外転 他動一六〇度 自動一〇〇度

(健側はいずれも一八〇度)

(4) 内転 他動 〇度 自動 〇度

(健側はいずれも 〇度)

(5) 外旋 他動 四五度 自動 四五度

(健側はいずれも 六〇度)

(6) 内旋 他動 六〇度 自動 六〇度

(健側はいずれも 六〇度)

(五) 原告は、平成七年四月二六日から同年九月二八日にかけて、長野県の鹿教湯病院に入院し、リハビリテーションを行うなどしたが、その後も、同じ姿勢でいると左頸部に痛みを感じたり、左手がしびれることがあるなどの症状が残存している。

二  検討

1  被告土谷建設の責任及び過失相殺

被告土谷建設は、本件事故現場に鉄板を敷設したものであり、その設置又は保存に瑕疵があり、また、敷設に過失があったものであるから、民法七一七条及び同法七〇九条に基づき原告に対し損害賠償責任を負う点については、当事者間に争いがない。

ところで、前記のとおり、本件事故の原因は、原告が段差にハンドルを取られたことにあるが、原告は、本件事故現場と同じ敷地内の都営住宅に居住しており、本件事故現場付近が工事中であることを十分承知していたこと、段差はさほど大きいものではないこと、原告は自転車の前照灯を点灯しており、相応の注意さえ払っていれば段差を発見し回避することは容易であったことなど、原告にも過失があったものと認められる。そして、被告の瑕疵ないし過失の程度と原告の過失の程度を比較考慮すると、過失相殺として、後記認定の原告の損害額のうち三〇パーセントを減じるのが相当である。

2  被告都の責任

前記認定のとおり、本件鉄板は、被告都が管理する都営住宅の改装工事に際し、道路を重機の通行から保護するために、被告都から発注された被告土谷建設が敷設したものであること、工事を直接的に施工しているのは工事業者である被告土谷建設であり、被告都は、注文者の立場にあって、その本件事故現場について被告土谷建設を通じて間接的に管理していること、また、右段差は、高低差が約二〇ないし三〇ミリメートル程度の比較的僅かなものであったといえること等の点に照らすならば、被告都がその発注に係る工事の実施に際して、本件のような比較的軽微な危険状態について、これを除去する措置を講じなかったとしても、これをもって、公の営造物について、設置又は管理の瑕疵があったものということはできない。

したがって、被告都は、国賠法二条一項に基づく損害賠償責任を負わないというべきである。

3  賠償すべき損害額

(一) 治療費 一〇万三二九〇円

甲六、八ないし一一及び二六によれば、原告は、治療費として、田﨑病院に対し六万九九六〇円、中村クリニックに対し二〇〇〇円、大山皮膚科医院に対し一〇〇〇円、小豆沢病院に対し七二六〇円、帝京大学病院に対し二万三〇七〇円をそれぞれ支払ったことが認められ、前記認定によれば、右の合計である一〇万三二九〇円全額について、本件事故と相当因果関係のある損害であると認めるのが相当である。

(二) 治療器具・薬代 二万九三八九円

甲一二、一三及び二六によれば、原告は、治療器具代及び薬代として二万九三八九円を支払ったことが認められる。

(三) 交通費 二万五八四〇円

甲二四ないし二六によれば、原告は、自宅と病院との往復等のために、タクシー代及びバス代として少なくとも二万五八四〇円を支払ったことが認められる。

(四) 入院雑費 九万六二〇〇円

前記認定のとおり、原告は田﨑病院に七四日間入院したことが認められ、一日当たり一三〇〇円の入院雑費を要したと認めるのが相当である。

(五) 家政婦代 〇円

甲一五及び二六によれば、原告は、本件事故後平成六年七月ころまでの間に、板橋区社会福祉協議会に家政婦の派遣を依頼し、代金一五万五八〇〇円を支払ったことが認められるが、原告が本件事故により家事労働ができなくなった損害については、後記(六)のとおり家事労働者の休業損害として評価したので、右支出を損害と認めることはできない。

(六) 休業損害 二二四万一五二五円

原告は、本件事故によって受けた傷害の治療のため、前記のとおり入院及び通院したこと、また、原告は、大正一五年八月一六日生まれの女性であり、家事労働を行いながら家政婦としても稼働していたものであることは明らかである(甲一四、二六、原告本人)。右の事情を考慮すると、原告の休業損害の額は、平成六年度賃金センサス女子労働者学歴計六五歳以上の二九八万八七〇〇円(一日当たり八一八八円)を基礎として、本件事故発生の日(平成五年七月一八日)の翌日(本件事故発生当日は休日であり、また、事故発生時刻が午後七時三〇分であることを考えると、その日については損害はないものと認める。)から半年間は一〇〇パーセント、それ以降半年間は五〇パーセント稼働ができなかったものとして算定して得た二二四万一五二五円とするのが相当である。

二九八万八七〇〇円×〇・五+二九八万八七〇〇円×〇・五×〇・五=二二四万一五二五円

(七) 後遺障害による逸失利益 〇円

前記認定のとおり、原告には左肩関節の可動域制限及び頸部の痛みなどの後遺症状が残存したと認められるが、右後遺症状は、自賠法施行令二条別表所定の後遺障害等級には該当せず、労働能力を喪失したと評価することは相当ではないから、後遺障害による逸失利益は認められない。

(八) 慰謝料 一九〇万〇〇〇〇円

原告の受傷内容、入通院期間、通院頻度及び一切の事情を考慮すれば、本件事故についての慰謝料は、一九〇万円が相当である。

(九) 小計 四三九万六二四四円

(一〇) 過失相殺 三〇パーセント

(一一) 過失相殺後の額 三〇七万七三七〇円

(一二) 一部填補 八五万〇〇〇〇円

被告土谷建設は、原告に対し、八五万円を支払った(当事者間に争いがない。)。

(一三) 弁護士費用 二三万〇〇〇〇円

本件事故の内容、審理経過、認容額等に照らすと、原告の本件訴訟追行に要した弁護士費用のうち二三万円が、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。

(一四) 合計 二四五万七三七〇円

三  結語

以上の次第であるから、原告の被告土谷建設に対する請求は、二四五万七三七〇円及びこれに対する本件事故の日である平成五年七月一八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、被告土谷建設に対するその余の請求及び被告都に対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、よって主文のとおり判決する。

(裁判官 飯村敏明 河田泰常 中村心)

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